この作品は、赤ちゃんの身体と心にふれることで、人が生まれたばかりの頃に感じていた、原初的な感覚を追体験する試みです。
バーチャルリアリティと、やわらかな膜でできた特別なボディスーツを用いて、その体験はつくられています。
私たちが生きているこの世界には、同じ場所にいても、まったく違う感じ方で世界を受け取っている人がいます。
そのことを、私たちは日常のなかで忘れてしまいがちです。
私たちは皆、かつて赤ちゃんでした。
しかし、当時どのように見え、触れ、動いていたのかを、はっきりと思い出すことはできません。
成長するにつれて、身体の大きさも、世界との距離も、大きく変わってしまったからです。
この作品は、大人がもう一度、赤ちゃんの感覚に近づくための入り口です。
ぼやけた視界、思うように動かない身体、世界との不釣り合いなスケール。
それらを体で感じることで、私たちが当然だと思っている感覚が、決して唯一のものではないことに気づかされます。
この体験を通して、世界にはさまざまな感じ方があること、
そして、その違いの中にこそ、人の多様さと豊かさがあることを、静かに共有できればと願っています。
